2012年11月21日水曜日

カーペットはハサミで切れますか?

ラグ、カーペットを自分で切ることができますか?」
というご質問をよく頂戴します。
 ご説明のためには、まず、ラグ、カーペットの構造のご説明をいたしましょう。

これがいわゆるタフトカーペット
パイル糸というのがカーペットの主役部分、簡単に言うとプラスティク製の基布に、パイル糸をし込んだもの。そうですね、田植えをイメージしていただいたらわかりやすいでしょうか。
パイル糸一本一本が稲。稲を一本一本土の中に差し込んでいるイメージです。基布に突き刺しただけでは安定しませんので、その根元部分をラテックスと呼ばれるのりで固定します。

裏材はさらにその下にくるもので、不織布や麻などを裏から貼り付けた感じです。
ここで少し話がそれますが、 ループカーペットというのは差し込んだパイルの上部分がループ上になっているもの。表面に見えるループが一つ、その足元は2本です。
これがそう↓

 次に表面のループ部分を刃物でカットすると


これがカットパイルです。 表面に見える部分がループ上になっていないもの。 この形状をなぜカットというのかがお分かりいただけるかと思います。

すこし話がそれてしまいましたが、ここで本題です。

カーペットはハサミで案外簡単に切れるのです。

「切り口からどんどんほつれてきそうな気がして、心配される方が多いのですが、上で述べたようにパイル糸の根元がラテックスで固定されていますので、どこで切っても糸がそれ以上ほどけてくるというわけではないのです。

切れるタイプかどうかは裏面で判断できます。 不織布と麻(ジュート)であれば基本的にOK. 柄が見えている織りカーペットは注意です。

織りカーペットは、切るのが大変です。また切り口から糸をひっぱるとほつれてきますので切る事はオススメしていません。


さあ、それでは、切ってみましょう!

はい、こんな感じで、ジョキジョキジョキっと!


通常我々がカーペットを切るときは、歯の長さが20cmくらいあるハサミを使いますが、事務用の小さなはさみでも切ることができます。

案外簡単です。 切り口はこんな感じ。

ただし、ミシンが掛けてある部分の、ミシン糸の部分はつまんでひっぱるとほつれてきます。
この対策は…… ひっぱらないことが一番です。カーペットは下に敷いてしまうとわざわざその部分をつまんでひっぱるなどということはしないと思いますので、普通は切りっぱなしで大丈夫です。

ただ、ほつれそうになったら、 木工用のボンドを使って止めてください。(床にボンドがつかないようにご注意を)木工用のボンドなら固まると透明になりますので目立ちません。(ボンドで固定した部分は固くなりますが、それほど問題はないでしょう)


というわけで、 

カーペット (いわゆるラグも同様です)はサイズが合わなければハサミで切る! これが正解。 

ちょっとした柱の出っ張りや、家具の出っ張りなど、自分で切ってみましょう。

図面さえあれば、カーペットの購入時に図面に合わせてカットすることは可能です。 ただ、どうしてもカットには誤差が生じますし、採寸の誤差もあります。このためあまり細かいカットを工場でしてしまうと、実際に部屋にあてはめたとき、小さな誤差が重なって隙間ができたり、足りなかったり ということはありえます。

このため、大きなカットは工場でするとしても、小さな切込みなどは一度カーペットを敷いてから、ハサミでチョキチョキ微調整したほうがキレイに収まる事が多いものです。

たとえば下記の 赤丸のしるしの部分などです。
こんな感じの切り込みがある場合も、自分でカットするほうがうまくいきます。


カーペットを切った場合に切り口がほつれないというのはここまでご説明した通りですが、 縁をミシンなどで処理をしていないと見栄えが悪いと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、

実は壁に面しているケースでは、ミシン目があるより、ないほうがキレイに見えるということもあるわけです。下の図、左のほうがすっきりしてるように見えませんか?

カーペットを切る……というのはプロフェッショナルな仕事のように思われてしまいがちなのですが、 意外と簡単。  カッターを使うよりハサミのほうが使いやすいと思います。 切る形が複雑なときは裏面にマジックなどで線を引いて切るといいでしょう。

万一、切り過ぎて逆に隙間があいたりしたら、ハギレ部分を隙間に埋め込めばそれなりにぼろ隠しもできますよ。

以上、簡単そうに書きましたが、それでも、実際ハサミを入れるとなると勇気がいるかと思います。 ご心配な方は、なんなりと下記メールでカーペット伝道師までご相談ください。

 カーペット伝道師直通メール carpetyasan@citrus.ocn.ne.jp






2012年11月8日木曜日

床暖ですが大丈夫ですか?

カーペットを敷きたいんですが、

「床暖房ですが大丈夫ですか?」
「ホットカーペットのカバーとして使えますか?」

よく聞かれるご質問です。
答えは、「ほとんどの場合使えます。」

ポイントはラグ、カーペットの裏側にあります。ラグ、カーペットの裏面は
大きく分けて不織布、ジュート(麻)、織りの3通りに分かれます。
 それぞれについてご説明していきましょう

まずは不織布↓
















これはポリエステルなどの繊維を織らずに固めたもの。
多くのラグ、カーペットに採用されています。物によってこの不織布そのものの
密度が違いますので、フェルトバックと呼ばれるしっかりしたものから、ティッシュペーパーを数枚重ねただけのような薄っぺらなものまで色々ありますが、このタイプのものはすべて床暖房、ホットカーペット対応と考えてもらって問題ありません。

次にジュート(麻)↓
















昔のカーペットはこれがほとんどでした。強い繊維の麻が網目状になっていますのでしっかりしていてカーペット全体がしっかりした仕上がりになります。(不織布は薄いものだと少しぺらぺらしてしまいます) 通気性もよくカーペットとしては理想的な裏材だと思うのですが、フローリング全盛となった時期に、フローリングがキズつく。などという理由で不織布のものが好まれる傾向になってしまいました。

実際、不織布よりは硬いですが、これで傷つくような木ならフローリングのほうに問題があると言いたいですね。ただ、フローリングには木の上にワックスを掛けることがほとんど、麻で強くこすったりするとそのワックス層に筋などが入ることはありますので、それをもってフローリングにキズがつくと言われてしまったのでしょう。

で、ジュートバックの場合、ホットカーペットや床暖にどうかと言う事ですが、今のところほとんどのメーカーがこのタイプのものはホットカーペット対応とは謳ってはいません。なぜかというとそれはカーペットの構造に関係しますので、ここで断面図を見ていただきましょう。

















パイルと基布を接着するためにつかっているラテックス(糊と考えてください)。これが熱によって硬化して接着量を失ってしまうものがあるからです。

ただ、現在はそこそこの品質のカーペットであれば耐熱性があるラテックスが使われていますので、本当はホットカーペットOKとしてもいいのではと、私は考えていますが、メーカー各社さんは慎重な態度をくずしていません。(口頭では問題ありませんって言ってますけど。)

したがって、裏面が麻張りのものは、絶対大丈夫かと言われると、避けてくださいといわざるを得ないのですが、よほど安かろう悪かろうのカーペットでない限りは大丈夫と考えてもらっていいかと思います。

問題があるとすれば・・・長期間の使用の末、熱で硬化したラテックスが粉状になって床に落ちることがあるということで。実はこれは時々あります。 また、裏面が不織布のものでも同じようなことがおきていることはあるのですが、麻は隙間があるのでその隙間から床に落ちてしまうのです。

仮に、この粉落ちがあったとしても、ラテックス自体は無毒のものですし、たちまち接着力がなくなり、パイル糸が抜けるということでもありませんので… 仮に粉落ちがあったとしてもそれは大きな問題ではないと私、カーペット伝道師は考えています。


次に、ウィルトン織りなどの織りカーペットの場合。
裏面はこんな感じ。↓
















これらは基本的には床暖房、ホットカーペットカバー対応と考えてもよいかと思います。ただ、一部の商品においては織り目を固定するため若干のラテックスなどを使っているケースがあり、このため、従来は対応付加と言われていたものがありました。このため現在ではメーカーによってあるいは品物によって、対応が変わってくることがありえますが、基本的には問題ないといっていいでしょう。

裏面で、問題になるとすれば、ゴム系の裏材が使われているケース。
これは、まれに熱のためゴムの部分が溶けて床にくっついたりすることがあるようですので、念のためメーカーに確認をした方がよいと思います。私が取り扱う商品の中では該当するものがないので、詳しいことは申し上げられません。

以上が、裏面の構造によって、床暖やホットカーペットカバーとして使えるかどうかの判断となります。


次に問題になるのは使えたとして、

熱がうまく伝わってくるのかどうか。という点。

答えは… 伝わってきます。 ただ、厚みがあればあるほど、密度が高ければ高いほど伝わり方は遅くなりますし、効率が悪くなることは避けられません。

厚みのあるものはカーペット全体が暖まってくる感じですので、薄っぺらいカバーで踏んだところが熱くなり過ぎるよりもいい。という考え方もできるかと思います。これはあくまでも感覚の問題ですので、どこまでがOKというものではありませんね。 、

また、ホットカーペットのカバーとして使う場合 ラグ、カーペットとして厚みのあり、素材が硬いものは、ホットカーペットの本体分の上の部分がすこし浮き上がってしまうことも避けられませんのでその点は考慮しておく必要はあるでしょう。

以上、ラグやカーペットを床暖房やホットカーペットの上に使えるかという観点でご説明させて頂きました。


ここでカーペット伝道師として申し上げたいこと。

ホットカーペットについては専用のカバーもあるわけですからそれを使えばいいという話ではありますが、残念ながら、カバーはあくまでもカバーとしてしか考えられていないようで、敷物として質のあまりよくないものが採用されているケースが多いと言わざるを得ません。 部屋の中で生活していて、目に触れるもの、足で感じるものはホットカーペット本体ではなく、カバー…つまり敷物の部分なのですから、満足度の高いものを選んで頂きたいですね。

また、床暖房のメーカーさんにとっては、床暖房の上に敷物を敷かないでくださいというお立場であることは理解できます。ラグ、カーペットの良さが暖かさだけであるならば床暖房があればそれですむことかもしれません。

しかしながらカーペットにはそれ以外に弾力性だとか、装飾性だとか、ホコリを舞い上がらせないだとかの、いろいろなすばらしい機能があるわけですから、

 ぜひ、床暖房のお部屋にも、ラグ、カーペットをお使いください。