秋になると街中では百貨店さんや家具屋さんなど、あちこちで「絨毯展」なるものが開催されます。きれいなペルシャ絨毯がならんでいることが多いですから、ぜひ、見に行ってくださいね。ひとりでも多くの方が絨毯にご興味を持っていただけたら私もとても嬉しく思います。
そこで、絨毯展にでかけるための、予備知識としてシリーズでペルシャ絨毯の基礎知識をお届けしたいと思います。
それでは、絨毯展で役に立つ。。。ペルシャ絨毯の予備知識,はじまりはじまり。
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まずペルシャ絨毯(じゅうたん)とは何か?
産地はイラン。作り方はハンドメイド(手織り)。つまりイラン製の手織り絨毯のことですね。どうしてイラン絨毯って言わないかって?? そりゃ、イラン(要らん)といわれちゃ 欲しいものも欲しくなくなっちゃいますからでしょう。(^o^; ついでに言うと、ペルシャカーペットとも言わないですね、なぜかペルシャとくると絨毯と続くようです。
ペルシャ絨毯といえば、その産地によって分類されることが多いのですが、5大産地とよばれるのがコム、イスファハン、ナイン、タブリーズ、カシャン…すべて地名です。 この言葉を覚えてるだけで、「ペルシャ絨毯通」ですね。 地図で示すとこんな感じ↓
それぞれの特徴を簡単に書きますと
★コム
コムシルクと呼ばれるシルクのペルシャ絨毯の産地として有名。日本ではこの産地のものが最も有名と言ってもいいでしょう。クムと呼ばれることもあります。原語表記するとghomと書きますので
ゴムというのが一番発音的には近い気がします。
なんと言ってもコムシルクは美しい!シルクの絨毯は見る方向によって色合いや明るさが大きく変わります。絨毯展で見かけたら向きを変えながら。。。あるいはその絨毯やマットを床においてその回りを一周しながらその色合いの変化を実感してください。 色んな角度から見る。これとても大切なことです。
キーワードはマスミ、ジャムシティ、ラジャビアン、サマディ
画像左 メダリオン柄
右 へシティ柄(パネル柄) いずれも代表的なデザインです。
★イスファハン
。。。イスファハンというのはイランの古都。絨毯の製造もこの地区のものがオリジナルといわれています。素材はウール。メダリオン柄を中心に、ちょっと古臭く、いかにもペルシャ絨毯らしいデザインのものが多いです。でもイスファハンの絨毯こそがペルシャ絨毯の王道だと私は考えています。
私もイスファハンの小さなマットを一枚持っていますが、こいつがすごい。私がこの業界に入ったときに「記念に!」ということで譲って頂いたものなのですが、(それほど高いものではありません)、
最初は あまり気付かなかったのですが、2~3年経つと…なんだかこう独特の艶が出てきて…
決してきらきらキレイという感じじゃないんですが、
「う~~~~~~ん、やっぱり良いなあ」って感じ。本物の良さというのでしょうか。
この、「う~~~~~~~~~ん、いいなあ」ってとこがウールのいいところなんですね。
(ちなみにシルクは見た瞬間にキレイと感じますので「わ~~~~~いいなあ」です。)
いつかはリビングルームにイスファハンの絨毯を敷きたいと思っています。
キーワードは セラフィアン、 ダルダシティ、ハギギ、ダーバリー
★ナイン
。。。。これも日本では知名度が高い。イスファハンの亜流と言っていいと思うのですが、クリームベージュ系のデザインが日本人には受けがいい。中心部に、ブルー、グリーン、レッドの色をつかっているものも多い。
全体に白っぽくて真ん中にそんな色使いをしているのがあれば「ナイン」とみて間違いないでしょう。ウールのペルシャ絨毯としては日本では一番人気ですね。目の細かいシシラと呼ばれる高密度タイプと、少し粗いけれど価格的にはお手ごろなノーラというタイプがあります。
キーワードは。。。ハビビアン
キーワードは セラフィアン、 ダルダシティ、ハギギ、ダーバリー
。。。。これも日本では知名度が高い。イスファハンの亜流と言っていいと思うのですが、クリームベージュ系のデザインが日本人には受けがいい。中心部に、ブルー、グリーン、レッドの色をつかっているものも多い。
全体に白っぽくて真ん中にそんな色使いをしているのがあれば「ナイン」とみて間違いないでしょう。ウールのペルシャ絨毯としては日本では一番人気ですね。目の細かいシシラと呼ばれる高密度タイプと、少し粗いけれど価格的にはお手ごろなノーラというタイプがあります。
キーワードは。。。ハビビアン
★タブリーズ
・・・これも有名な産地です。上記の地図にあるように他の産地からはすこし離れたイランといってもトルコの国境に近いところにある産地でトルコ絨毯の影響を多少受けている感じ。
・・・これも有名な産地です。上記の地図にあるように他の産地からはすこし離れたイランといってもトルコの国境に近いところにある産地でトルコ絨毯の影響を多少受けている感じ。
魚の鱗の模様みたいな「マヒ柄」と呼ばれるものが絨毯展などには出ていることでしょう。マヒがでたらタブリーズ です。少し薄いピンクがかったような色合いが特徴のベナムと呼ばれる工房のものも有名ですので、要チェックです。
キーワード・・・アリナサーブ、ベナム
画像左 :マヒ柄
右 :ベナム工房デザイン
あと、動物や人物、風景などを 絵画のように織り込んだ絨毯が絨毯展 に飾ってあるでしょう。 これもタブリーズのもの。アリナサーブと呼ばれる工房のものが有名。絵画調のものをみたら 「アリナサーブ」ですねと言ってみてください。 店の人がびっくりします。(^^)v
★カシャン
。。。。。イスファハンと同じように古い産地なのですが、少し知名度は落ちます。最近では絨毯展などではカシャンで織られたシルク絨毯が紹介されることが多く、実はシルク絨毯としてはコムシルクよりずっと本家本元。
ホワイトカシャンと呼ばれるものが特に有名というか、すっごくキレイです。シルク絨毯で白いものを見つけたら「これホワイトカシャンですね」と言ってください。すごく「通」のように思われます。(^^)v
ホワイトカシャンと呼ばれるものが特に有名というか、すっごくキレイです。シルク絨毯で白いものを見つけたら「これホワイトカシャンですね」と言ってください。すごく「通」のように思われます。(^^)v
キーワードはファラー
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さて、 上記でキーワードとしてあげたのは各産地での有名工房の名前です。工房というのは要するにデザイナーであり、工場みたいなもの。有名な工房できっちり管理されてできたものはやはりそれなりに素晴らしいものです。
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さて、 上記でキーワードとしてあげたのは各産地での有名工房の名前です。工房というのは要するにデザイナーであり、工場みたいなもの。有名な工房できっちり管理されてできたものはやはりそれなりに素晴らしいものです。
その工房のデザインである証しとしてシグニチャーがこんな風に織り込まれます。↓
ただ、すこしぶっちゃけ話をしますと、 このブランドのシグニチャーを織り込むのは簡単なことなので、実際には、玉石混合。 本当に格式の高い工房のものもあれば、真似しただけの偽者もあり、また、 「2年3組山田◎◎です。」と作者の名前を普通に書いただけという程度のものもあるようです。ネームが入っているほうが上等には見えますが、気持ちの問題でもあるかもしれません。
そういえば、プロ野球阪神タイガースが何十年ぶりかで優勝したあの年、優勝記念企画で、ここに「タイガース優勝おめでとう」みたいな文字をいれたペルシャ絨毯がでまわったことを思い出します。イランの文字で書かれていたので読めませんでしたけどね。 もちろん黒と黄色をベースとしたデザインでした。
以上、ペルシャ絨毯の5大産地について書きましたが、このほか、無名ブランドのものでも良い物はたくさんあり、それらはカーペットバザールと呼ばれる市場で取引されています。
5大産地以外ではアルデビル、ザンジャン、ケルマンシャー、イラム、ビジャー、マシャド、ヤズド、ケルマン、ラバーなども有名(すべて地名)ですが、それ以外にもさらに無名な産地、あるいは周辺国、パキスタン、アフガニスタン、トルコメニスタン、トルコには隠れた産地がたくさんあります。
ビールでたとえれば5大産地のものが、キリン、アサヒ、サッポロ、サントリー、エビス。 これに対して無名産地のものは地ビールに相当する。。。地絨毯ですね。無印だけど、物は決してブランド物に引けをとりません。
「ペルシャ絨毯=きらきらとキレイだけど高い絨毯」と思われてしまうことが多いのですが、きらきらと艶やかなのはシルクなどの一部の絨毯。むしろそれ以外に、 地味だけと、高品質、高感性の絨毯がたくさんあることご理解いただき、ペルシャ絨毯に興味を持ってもらえたら嬉しく思います。
おっと、もうひとつ、大事なペルシャ絨毯を忘れるところでした。それはギャベ。
ギャベ:
イラン中央部のザクロス山脈を行き来するカシュガイ族などの遊牧民が織った分厚くて素朴な感じの絨毯です。 冒頭の地図のなかにあるシラーズという町で集荷されることが多いようです。
遊牧民が彼らの生活シーンの中で見ている砂漠やオアシス、そこに生活する人や動物達の姿、そういったものを見たままのイメージで絨毯に織り込んでいく。そんな素朴なところがとても素敵な絨毯です。
「ギャベ」というのは毛足が長い絨毯という意味と同時に「粗い」という意味もあるそうです。だからというわけではないのですが、織りそのものはかなり粗っぽいんです。サイズがかなり歪んでたりしますから。でもそういうところがまたギャベの魅力なんですね。
従来のペルシャ絨毯が芸術品だとすれば、ギャベはまさしくアートの世界です。絨毯展のどこかにきっとギャベのコーナーがあると思いますので見てください。
今回は産地を中心とした話でしたが、また日をあらためて織りのこと、染色のこと、相場のこと、「通」っぽく見える見方などについても書いてみたいと思いますので乞うご期待。
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